飯野賢治さんが40代という若さでお亡くなりになったそうです。とても残念です。

 飯野賢治って誰?って人が多いと思いますが、世間ではゲームクリエイターとして有名です。代表作はDの食卓というタイトルです。太っててホリエモンを強面にしたような見た目ですが、世間に対する挑発的な発言と芸術性や知性を感じる作品の評価によって、ゲーム業界で一世を風靡した人です。

 ミュージシャンや小説家としても活躍していたようで、エリートであった幼少期から高校中退、フリーターを得て、反骨心丸出しのロックな生き方でクリエイティブな方向で成功を納める。漫画みたいなスーパーヒーローだったのです。

 彼が代表作[Dの食卓]で頂点を極めていた頃、自分は高校生でした。Dの食卓ももちろんやりましたし、その頃彼が書いた自叙伝も読みました。

 自分と父を捨てて出ていってしまった顔も覚えていない母親への愛情と憎しみ。同級生たちと同じ学歴エリートになれなかった挫折、コンピューターやバンド活動との出会い。高校中退、フリーターとして働きながら自分探しの旅、そして現在の成功とこれからの未来。

 有名人の自叙伝というのは、たいていかっこよく誇張される部分があるわけですが、当時高校生の自分にはそんなことはわかりません。今読んだらわからないけれど、当時の自分は衝撃を受けました。

 この人の人生は、まるで自分ではないのか?

 中学時代、姉に比べてあまりにも学業成績が振るわない自分を心配して親に学習塾に入れられたのですが、勉強の才能があったようで、成績は進学校へ行けるようになってきました。
 優等生の姉と同じように、進学校へ進み良い大学へ進み、親や先生の期待に応える事が自分の使命と考えながらも、劣等生時代からの友達との友情のために夜のゲームセンター通いを続ける。

 結果、高校受験に失敗。どうしても高校だけはいってほしいと母親に泣きつかれ、やむ無く定員割れの底辺一歩前の町外れの高校へ行くことにする。町外れの見知らぬ土地で、誰も知らない。友達もいない。もはやエリートですらない。同級生から誘われて仕方がなく始めたバンド活動くらいは楽しかったが、それ以外の時間は常にイライラしていた。出会う人全てにムカついていた。

 そんな頃に出会った飯野賢治という人の人生。全てが自分のように思えました。私は飯野賢治に英雄の姿を見たのです。

 残念ながら自分は飯野賢治のようなヒーローにはなれませんでした。いつの間にかこの人の名前すら忘れていました。世間の尺度で言うところの平凡な幸せを手に入れて、結構幸せてす。ですがあの頃を忘れる事はありません。そんな多感な時期に知った人です。

 飯野賢治さんのご冥福を心よりお祈りいたします。