いづみ屋

福島県福島市に住んでいる普通の会社員の日記です。 趣味の音楽などの創作活動や仕事の事などを書いています。

読書レビュー

Another

綾辻行人さんの小説 Another を読みました。

今AKBの前田敦子さんがヒロインの鳴役で映画化されているらしいですが、そんなわけで本屋の目立つところに沢山あります。

今回初めてホラーというか、そういう奴を読んでみたのですけど、前半ののんびりした、といっても多少違和感を感じながらもスローテンポで進むところで自分的にはちょっと気になりました。もちろんじわじわとやってくる恐怖の前触れってことで、そういう演出なんでしょうけどね。

科学では解明できないが、ある法則によって発生する災害。とにかく最初の犠牲者が現れるまでが長く、後半猛スピードで恐怖がやってきます。でも最後は、前半のスローな部分に伏線が張り巡らされているという・・

コンダクターのあとに感想書いているので、若干読んだあとのテンションよりも下がってますけど、面白かったと言えば面白かったかも。だたホラーとしてはあまり怖くないというか、そもそもこれは呪いとかそういう類ではないので、超自然現象によるもの?だからでしょうかね。

探偵ガリレオ

東野圭吾さんの小説 探偵ガリレオを読みました。

この物語は福山雅治が主役の湯川助教授役でドラマ化、映画化もされ、東野圭吾の代表作の一つとも言えるシリーズとなりました。その一巻目にあたるこの小説は、短編形式で一話事の事件を解決していくものです。

科学技術の知識を利用したトリックと、それを暴いていく天才物理学者の湯川というちょっと変化球の探偵物ですが、湯川教授のシニカルなキャラクターの楽しさとトリックのわかりやすさでとっつきやすいさらっとよめる探偵小説といえると思います。

何冊か小説を読んでいくと、僕も小説に対する好みとか評価みたいなものがなんとなくわかるようになってきたような気がします。マルドゥックスクランブルや火車のような人間の深い感情を精密に描いたものや娯楽性の強いスピード感のある推理物、ハードボイルドものが好きなようです。

小説に関わらす、物語の登場人物ってのはやっぱりちょっと変な人のほうが興味がわくんですね。とてつもなく酷い悪人であっても憎たらしいし、やっつけられたら嬉しいしとか思うし、コンプレックスがある登場人物はそれを乗り越えていく過程に感動できるし、名探偵であってもちょっと変な人だと妙に安心すると感じがします。

天才物理学者として事件を解決する湯川は、その頭脳の回転の速さで超人であるいっぽうで、論理的な思考をもたない子供が苦手だったり科学のこと意外はあまり興味がなく適当だったりと、いかにも理系人間的な融通のきかなさという欠点ももっていて、それゆえに自分は安心できるのです。なんでも知っている都合のいい名探偵ではないのですね。

この小説も面白いですが、東野圭吾さんの作品だと百夜行が好きですね。理由は僕が火車が好きなのと同じ理由かもしれません。歪笑小説、黒笑小説など短編でコミカルなものも書いています。東野圭吾さんの作風の幅広さは凄い才能だと思います。音楽でいうとネオクラシカルメタルからブルースロックまでできる人みたいな幅の広さという感じでしょうか。

わかりやすく、痛快で軽快な探偵物です。

ビブリア古書堂の事件手帳

三上延さんの小説、ビブリア古書堂の事件手帳を読みました。

この小説は本屋さんで売れているベスト5に入っていたので、なんとなく読んでみた感じです。ライトノベルというわりかし軽い文体で読みやすい小説の種類だそうで、キャラクター描写も漫画的な感じですがこういうのに偏見とかなければ普通に面白いです。

物語は古書店の店主である栞子さんと、主人公の就職活動中のフリーター店員大輔との古書にまつわるお話を時にミステリー風にしながらも、結構ほのぼのとした感じで綴っています。

はっきり言っちゃうとこの栞子さんにどのくらい萌えられるかがこの小説を読めるかどうかの最重要な問題なのかもしれません。黒髪ロング、清楚色白美人、ドジっ子、人見知り、恋愛に鈍感、実は巨乳、メガネ、でも本のことになると凄い知識と洞察力を発揮する。どうです社長?めんどくさそうな女でしょ?

キャラクター設定はともかく内容は古書にまつわるストーリなのでちゃんとしてます。刺激的な暴力シーンもエロもグロもあっと言わせるトリックも狂気もありません。でも退屈ではありません。この作品全体に漂うほのぼのとしたオーラがそうさせてくれるのでしょうか。読み終わったとき、心がほっとして暖かくなる。そんな感じはします。鎌倉という微妙にゆったりとした感じがする舞台設定のせいもあるのでしょうか?鎌倉旅行にいってみたいですね。

栞子さんのことも別に嫌いではないんです。ちょっと浮世ばなれしたキャラなんで。、でも素敵な人だとは思います。女性としてのエロスを感じないだけで、素敵な人です。童貞の中学生の気分で淡い憧れを抱くには最適な人かもしれません。僕は薄汚れたおっさんだからです。子供に手を出すほど変態じゃありませんしね。

シリーズものなので今後も続きます。離婚し栞子さんを捨てて失踪したお母さんが出てきますが、僕が好きそうな峰不二子的クソビッチであってほしいです。そしたらキャラに萌えます。でも絶対いい人だろうなぁ・・それでいいんです。この世界はほのぼのとして清楚で優しい物語であることが重要なのですから。

草食系男子と女子にも安心して勧められる素敵な小説です。

フリーター家を買う。

有川浩さんの小説 フリーター家を買う を読みました。

嵐の二宮くんと香里奈が主演でドラマにもなりました。ドラマも面白かったのですが、
小説版は若干キャラクター設定が違ったりストーリーが違うものの、またこれはこれで楽しいです。

サザエさん一家のようなごく普通のステレオタイプな中流家庭。ですが時代の大きな転換期にあたる現代においては、既存の価値観にしがみつこうとするこの平和な一家にも様々な試練が待ち受けます。

何をやっても半端者の主人公誠治は、家族の危機がきっかけで立ち直り、立派に社会人となっていきます。その青年の成長と家族の絆の再生の物語ですが、さらっとよめて、若くて、感動できる。そんな小説です。

主人公の誠治にたいしては、自分はとても感情移入ができますね。主人公の誠治は決して優秀ではないが、かといってどうしようもなく馬鹿でもなく、若さゆえの自意識過剰と世間知らずなボンボンであるマイナス面もあるものの、若者らしい純粋さと優しさも心のうちには秘めている平均的な若者像に思えます。

「天地明察」の主人公のような勤勉さも謙虚さも特別な才能も持ち合わせていない、欠点の多い主人公。でもそれがダメ人間である自分にとって共感できる部分でもあり、彼の成長を心から応援したくなる気持ちにさせてくれます。

誠治の人間性だったり、その後の成長の物語といい、かなり自分の若い頃の人生とリンクするところがあります。両親、特に母親に溺愛されて育ち、特別な才能や能力を発揮することもないが決して普通以下でもない、世間知らずでなんの成果も出さないくせに屁理屈ばかり一丁前で自己評価だけは無駄に高い。次は本気だす!とかいいながらやっぱり度胸もなくて勝負しにいかない。打ちのめされて自分が否定されるのが怖いから。結果を常に先送り。

世の中が悪い。政治が悪い。親が悪い。もっともらしい屁理屈をこねて何もしないウルトラダメ人間の誠治は、まさに自分の過去そのもの。そんな若者が家族のために立ち上がり成長していく姿を応援せずにいられません。

ストーリー的には出来すぎた感もあるのですが、そこはそういう物語なので。あんまり酷い困難ばかりでもテンポよく主人公を成長させられないわけですしね。

火車

宮部みゆきさんのミステリー小説。火車を読みました。

アマゾンのレビューでも賛否両論のラストシーンですけど、僕は好きですね。断崖絶壁で船越英一郎に全てを告白する犯人だけがミステリーの終わり方ではないと思うのです。他人のことを認識するときに、その周りで起こった過去や事実から、推定する意外の方法というのはないのです。たとえ本人が認めたとしても、それも嘘かもしれないしね。

もちろん僕も、最後に犯人の独白というのを期待する気持ちもあります。それほど深い心の闇をもった人物ですから、はっきりさせてもらいたいスッキリしたい。でも一方で、それを作者がこうだと決めてしまったら、これまで積み上げてきた犯人の底知れなく暗い何かが薄っぺらくなってしまうような気持ちもあるのです。

その後の彼女がどうなったのか?その場で泣き崩れて涙ながらに全ての犯行を白状したかもしれないし、眉一つ動かさずにしらをきるかもしれない。取り乱して力ずくで逃げようとしたかもしれないし、その場で命を絶ったかもしれない。

全てを涙ながらに告白してしまえば、読者はああ、この人は罪を犯してしまったけど、本音のところで悪い人間ではなかったのだと納得し、安心できるのでしょうが、それだとこの犯人は、どうしても魅力的な人物とは言えないようになってしまう気がするのです。

犯行の動機も、推測ではあるがはっきりしている。だが彼女の心の中にある深い闇の部分は、結局のところはっきりと決着がつかず、その得体の知れないものに恐怖を感じるけれど、一方でそれが彼女を美しく魅力的に見せている気がします。知りたいけど、知りたくない。そんな感じです。

読んだあとに、深く心に残る余韻があり、重く悲しくも芸術性を感じる小説です。
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